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1.「ブドウ糖負荷試験について」

ブドウ糖負荷試験では、午前中の空腹時に75グラムのブドウ糖を瓶入りジュースとして飲んでいただき、その前、30分後、60分後、120分後の計4回(標準的な検査法として)採血を行います。計測する項目は血糖値と血中インスリン値になります。この検査は、75グラムOGTTとも呼ばれます。

以前は、糖尿病を診断するにあたって多くの方に実施されていましたが、糖尿病の診断法の一つにHbA1c値が採用された影響もあって、実施回数は減っているようです。

ブドウ糖負荷試験は顕著な高血糖がすでにある方では行いません。それだけで通常は糖尿病と診断してよいからです。また、検査が血糖値をさらに悪化させる危険性もはらんでいるからです。 この試験の実施意義がもっとも大きいのは、境界型糖尿病もしくは軽症ながらも糖尿病ではないかと疑われる場合です。糖尿病診断の材料としては、検査前と120分後の血糖値を用います。前者で126 mg/dL以上、後者で200 mg/dL以上が、「糖尿病型」として扱われて、確定診断の判断材料となります。また同様に、110~125 mg/dL、および140~199 mg/dLは「境界型」として、総合判断の材料になります。正常と判断されるためには、前者が110 mg/dL未満、かつ、後者が140 mg/dL未満であることが条件です。

血糖値と同じくらい重要な情報をもたらしてくれるのが、血中インスリン値です。正常の方はブドウ糖内服後、一気呵成にインスリンが分泌されて、血糖値はわずかしか上昇しません。30分値でこの傾向が明らかにわかります。血糖が下がるとインスリンもあっと言う間に分泌されなくなります。この早い時間帯のインスリン分泌のことを初期分泌といいます。境界型になると、この初期分泌が悪くなってしまい、糖尿病の方ではもはやインスリンはだらっと少量しか出なくなります。この結果、血糖値は60分になっても120分になってもいつまでも高い高原状のピークを築くのです。

血中インスリン値でもうひとつ重要なのは、ブドウ糖を飲む前の空腹時インスリン値です。正常の方では血糖値も低いのですが、インスリン値もまた低値です。しかし、高度な肥満の方に代表されますが、血糖値が正常もしくは境界型であってもインスリン値がとても高い方がいます。「たくさんインスリンが出ているんだから、いいことなんでしょう?」と考えるのは誤りです。血糖値を是が非でも下げるために、インスリン分泌細胞が頑張って無理を重ねてインスリンを出している、と考えるべきなのです。この状態が永く続くと、インスリン分泌細胞は疲弊してしまい、やがてインスリンを出せなくなります。この時点こそが決定的な高血糖が現れて、糖尿病が発症した瞬間となるわけです。このような空腹時高インスリン血症があったら、急いで肥満を解消する努力をすることが大切です。

インスリン分泌細胞の負荷を減らして、できるだけ温存する。そうして末永く血糖コントロールの主役としてインスリン分泌細胞を活躍させること。これが糖尿病治療にとってとても大事なことなのです。