8.「スルホニル尿素薬~2型糖尿病の治療において中心となる薬剤についてお話します。」
今回はスルホニル尿素薬を取り上げます。この薬剤はインスリンを分泌している細胞である膵臓のベータ細胞に直接働きかけます。ベータ細胞では血糖値が上がるとそれを感知して細胞内にカルシウムというイオンが流れ込み、これがインスリンの分泌を増やします。2型糖尿病の患者さんではこの仕組みが弱っていることが多く、そこで登場するのがスルホニル尿素薬です。
この薬剤はベータ細胞において強制的に細胞内にカルシウムを流しこむのです。インスリンを分泌させる力は強力であり、約2か月間の平均血糖値を示すHbA1c値を大きく低下させます。しかし、血糖値が低いところでもインスリンが分泌され続けるので低血糖も起こしやすくなります。現在使用されている飲み薬のなかでは低血糖の危険性が最も大きいとされています。
また、過剰な栄養摂取があるところにインスリンが強く作用すると栄養分が体内に脂肪として蓄積される結果、体重増加を引き起こします。実は、低血糖と体重増加は糖尿病治療において特に避けなければならないものなのです。最近の治療では飲み薬を使用する場合、これらの懸念が少ない薬剤から使用される傾向にあります。こういったこともあり、スルホニル尿素薬の新規使用は現在ではかなり減ってきているのです。
ただし、この強力なインスリン分泌増加作用をうまく使うことが必要なケースがあります。少量で血糖低下効果が期待できるので、低血糖が起きない範囲で量を調節して使用する方法です。昔からスルホニル尿素薬を使用されて上手にコントロールされている方はそのまま使用して結構だと思います。