10.「DPP-4阻害薬について」
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2009年に臨床現場に登場して以来、またたく間に最もよく使用される薬の仲間入りをしたのが、このDPP-4阻害薬です。
血糖値を下げる仕組みですが、腸から血中に分泌されるインクレチンと呼ばれるホルモンの活性を高めることにより間接的にインスリンの分泌を高めるとされています。
先に、世界的にはメトホルミンがファーストラインの薬剤であると説明しましたが、日本においてはメトホルミンの使用割合の伸びや高用量の認可が遅れているうちに、DPP-4阻害薬が広く普及する結果となりました。その理由は、確かなHbA1c低下効果もさることながら、副作用の心配が少なく、特に単独使用では低血糖の危険が非常に少ないことが挙げられるかと思います。スルホニル尿素薬は低血糖が起きやすい薬剤でしたので、スルホニル尿素薬を中心に処方が組み立てられていた日本ではDPP-4阻害薬の登場はまさに福音だったのです。
また、メトホルミンを使用する際には腎機能に配慮することがとても大事なのですが、DPP4阻害薬ではそこまでではなく、一部の薬剤では透析患者にまで使用できます。さらに、体重に対する影響ですが、スルホニル尿素薬と違い、体重増加作用はありません。このように効果と使いやすさのバランスが良いことを背景として、日本ではDPP-4阻害薬を第一選択薬だと考える向きも少なくないようです。一方、肥満の程度が高度の欧米諸国ではDPP4-阻害薬の血糖降下作用が日本における場合と比べると弱いようで、そこまでは選択されていません。より効果の高い、インクレチンホルモン類似体の注射薬であるGLP-1受容体作動薬という薬の方がより好まれています。このGLP-1受容体作動薬は血糖がよく下がり、体重も減りますが、吐き気が強く出るというマイナス面が知られています。