11.「一躍脚光を浴びているSGLT-2阻害薬」
今年の米国糖尿病学会ですが、西海岸の海洋都市サンディエゴで開催されました。この学会における臨床方面のトピックを一つご紹介したいと思います。「CANVAS試験」結果の発表です。これは、尿中にブドウ糖を大量(70-100グラム/日)に排泄して血糖値を下げるとともに、体重や血圧、中性脂肪や尿酸値、尿蛋白を低下させる効果も併せ持っているSGLT-2阻害薬というクラスの薬剤の効果をみた試験です。
同じクラスの他の薬剤で先行した研究「EMPA-REG OUTCOME試験」では、心臓血管病や死亡率、心不全による入院を減らすなどの顕著な効果が確認されており、今、非常にホットな薬剤です。
今回の発表は2番手としての研究結果ですが、先行するひとつの試験だけでは完全に信用しきることはできないと考えられているため、今回の結果が先行研究の結果と同様であれば、ほぼ確信をもってこのクラスの薬剤の有効性が示されることになります。結果は、対象となる患者さんの層が多少違っていたため細かい相違点はあるものの、ほぼ同等の結果でした。
日本の先生方はよい意味で慎重ですので、この新しいクラスの薬剤の処方は控え気味でしたが、今後じわっと使用が増えてくるのではないかと考えられます。
今回の試験のような高品質の臨床研究結果は、ボストンで編集発行される世界に冠たる臨床医学系ジャーナル「ニューイングランドジャーナルオブメディシン」に学会発表と同時刻にオンラインで掲載されます。学会とジャーナルの共同作業ということになりますが、プレミア感が高まり、さすが米国らしい演出だと思います。