高血圧症 〜 Silent Killer 〜
- ✅ 頻 度
- 我が国の高血圧有病者は4,300万人と見積もられています。およそ、3人に1人の割合であり、ごく身近な疾患です。治療を受けていてコントロールが良好な人は1,200万人のみで、その他の人は、コントロール不良ないしは、未治療、あるいは自分が高血圧症であることを自覚すらしていないのが実情です。
- ✅ 何が問題か
- 血圧は毎分50-90回程度、1秒たりとも休むことなく全身に血液を送っていると同時に、血管に負担をかけ続けています。送液するチューブ、ホース、水道管、パイプライン、いずれをとっても経年劣化を免れるものは血管を含めてありません。血圧が平均で4mmHg程度さがるだけでも血管病が有意に減少することがわかっています。
- ✅ どう血圧を測定するのか
- 家庭で血圧を測ることは必須とお考えください。再現性や薬効評価の点で、診察室血圧・待合室血圧よりも優れています。血圧手帳をお渡ししますので、朝晩での測定と記録を日課としてください。家庭血圧計は、数千円程度と高価ではありますが、必需品とお考えいただき、迷わずに早めに購入しましょう。来院時は自動機器による測定も行いますが、基本的に医師が診察室でも測定を行います。
- ✅ 高血圧の診断基準値
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診 断 |
診察室血圧 |
家庭血圧 |
高血圧症 |
140/90 以上 |
測定できない |
高血圧症 |
140/90 以上 |
135/85 以上 |
白衣高血圧症 |
140/90 以上 |
135/85 未満 |
仮面高血圧症 |
140/90 未満 |
135/85 以上 |
- ✅ 降圧目標値はどうなっているのか
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対 象 |
診察室血圧 |
家庭血圧 |
75歳未満の成人
脳血管障害患者
(両側頸動脈狭窄・脳主幹動脈閉塞なし)
冠動脈疾患患者
CKD患者(蛋白尿あり)
糖尿病患者
抗血栓薬服用中 |
130/80 未満 |
125/75 未満 |
75歳以上の高齢者
脳血管障害患者
(両側頸動脈狭窄・脳主幹動脈閉塞あり, 未評価)
CKD患者(蛋白尿なし)
| 140/90 未満 |
135/85 未満 |
血圧は、日内変動、季節変動、測定環境(家庭、会社、 医療機関など)に伴う変動などがあり、即座に高血圧の診断を下したり、コントロール状況を判断しにくい特性があります。重症高血圧でなければ、しばらく経過観察をすることもあります。
- ✅ まずは生活習慣の修正を心がける
- ・減塩は必須です。1日あたり食塩6g未満とします。食品表示では食塩の代わりにNa換算量となっているものも多く、食塩(NaClです)を過小評価してしまわないようにしてください。Na換算量を2.5倍すると食塩換算量となります。
・飲酒は直後には血圧を下げますが、翌朝には血圧を上げています。節酒を心がけてください。望ましい量は、純エタノール換算で、男性20-30 mL/日以下、女性10-20 mL/日以下です。
・禁煙は必須中の必須です。受動喫煙も防止することが必要です。
・食事では野菜や果物を積極的に摂ってください。これらに多く含まれるカリウムは腎臓から塩分を排出させる働きがあります。なお、肥満がある方は果物は控え目にしてください。太ります。
・運動は軽い強度の歩きなどの有酸素運動を行います。毎日30分、あるいは週に180分以上歩きましょう。
- ✅ 薬剤はどう使うのか 〜 主要降圧剤の適応疾患・病態
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疾患 病態 |
カルシウム 拮抗薬 |
ARB/ACE 阻害薬 |
サイアザイド
利尿薬 |
交感神経
β遮断薬 |
左室肥大 |
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● |
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心不全 |
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● |
● |
● |
頻脈 |
● (一部) |
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● |
狭心症 |
● |
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● |
心筋梗塞後 |
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● |
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● |
慢性腎臓病 |
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● |
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通常、単剤の少量から開始して、増量します。必要に応じて最大の効果を引き出すように2剤、3剤と併用療法を行います。
この他にも、直接的レニン阻害薬、ループ利尿薬、交感神経α遮断薬、ミネラルコルチコイド拮抗薬などがあります。